1:「メディアリレーションの基礎」
メディアリレーションズとは、企業や団体が報道機関(メディア)と良好な関係を築き、維持していくための活動の総称です。広報PR活動の真の目的は、情報を得た人が行動を起こすことですが、その目的を達成するためには、新聞やテレビ局などのマスメディアの発信力が必要不可欠であり、メディアとの関係性が基本となります。
プレスリリースは、メディアという第三者の客観的な視点を通じて自社の情報を広く社会に届ける手段であり、正確で価値のある情報を提供することは、メディアとの良好な関係(メディアリレーションズ)を築く第一歩となります。
やみくもに大量のメディアに配信する「数打てば当たる」的なアプローチは効率が悪く、メディア側に「自社のことを理解していない」というネガティブな印象を与えかねません。広報活動を成功させるためには、プレスリリースを単発の施策で終わらせず、継続的な情報発信を通じてメディアとの良好な関係を築いていくことが極めて重要です。
2:メディアの分類
プレスリリースを配信する際は、最終的な読者や視聴者層、そしてその層が接触するメディアの両方を指すターゲットメディアを選定する必要があります。
ターゲットメディアを選定するには、以下のステップが有効です。
- ターゲット読者層のペルソナ設定:自社の製品やサービスを届けたい顧客層を具体的に設定します。
- ペルソナが接触するメディアのリサーチ:ペルソナが日常的にどのようなメディア(テレビ、新聞、雑誌、Webメディアなど)から情報を得ているかをリサーチします。
- 各メディアの特性の分析:そのメディアがどのような読者を抱え、どのような切り口の記事を多く掲載しているのかを深く理解し、過去の記事を分析することが不可欠です。
メディアの種類と傾向を理解することは、プレスリリースを作成する上でも重要です。
| メディアの種類 | 主な傾向と対策 | 参照元 |
| テレビ | とにかく写真(映像)重視。取材対象先でインパクトのある映像が撮れるかが重要。**「動き」「変化」「感情」**が見える場面を用意することが鍵となる。 | |
| 新聞 | 経済面・企業活動文脈の記事が中心。全国紙やキー局はあらゆるテーマを扱うため、自社情報と親和性の高い部署(経済部、医療健康部など)を見つけることが重要。 | |
| 雑誌 | 読者層と記事のジャンルが明確。企画は2〜3ヶ月先を考案しているため、編集者とのリレーション構築が必須。リリースは雑誌のテイストに合わせる。 | |
| Webメディア | とにかくニュース性が一番。新商品やできたばかりのお出かけスポットを掲載する傾向にある。人数の少ない編集部が多いため、掲載用の画像やプレスキッドの添付が必須。 |
3:メディアリストの作り方
プレスリリースを送付するメディアを選定し、その連絡先を管理するために、メディアリストを作成します。広報PRが強い会社は、自社独自のメディアリストを構築しています。
リスト作成のステップと含めるべき情報
- ターゲットメディアの選定:発表する内容と親和性があるかどうかという視点で絞り込みます。単に業界やジャンルで選ぶのではなく、コーナーや特集などの相性、傾向、メディアの規模なども検討材料にすると、よりマッチ度の高いメディアを選定できます。
- 情報収集:リサーチ結果を基に、アプローチすべきメディアのリストを作成します。メディアのウェブサイトに掲載されている**「プレスリリースの送付先」や「情報提供窓口」を確認しましょう。また、コンテンツの署名や組織図**から担当記者や部署を割り出すことも貴重な情報源となります。業界資料である「PR手帳」や「マスコミ電話帳」の活用も有効です。
- リストに含める情報:リストには、媒体名、所在地、電話番号、プレスリリースを送付できそうな連絡先、可能であれば担当者名などを記載します。
- 管理:メディアリストは、今後の広報PR活動にも役立てられるものだということを意識して作成することが大切です。連絡履歴や配慮すべき点などを記載する欄を設けておくと、別の広報PR担当者も活用しやすくなります。
リストの維持・メンテナンス
記者の異動は頻繁にあるため、メディアリストは一度作って終わりではなく、鮮度を保つための継続的なメンテナンスに多大な手間と時間がかかります。メディアリストは、使用するごとに送付先の情報に変更がないかなどを確認するようにしましょう。
4:日常の情報収集(関心領域の理解)
コンスタントに情報発信を行い、適切なメディアに情報を届けるためには、日常的な情報収集とメディア研究が欠かせません。
- メディア研究:各メディアの特徴や取り上げられやすいテーマを理解し、プレスリリースの送付先を的確に選定できるようにします。
- 記者の視点:「このメディアの担当者は、どのような情報なら取り上げたくなるだろうか」とメディア関係者側の視点に立つことが大切です。
- 外部環境の把握:日頃から競合他社のプレスリリースをチェックし、業界の動向を把握することが重要です。また、マスメディアやSNSでのトレンドをチェックし、社会情勢や流行に敏感でいることも求められます。
- 情報の「料理」:メディアの文脈を深く理解し、自社の情報をそのメディアに合わせて「料理」し、提供する姿勢が記事化の確率を格段に高めます。情報収集とメディア研究は日常業務の一部として習慣化し、常に最新の情報にアップデートしていく姿勢が大切です。
5:やってはいけない一斉大量配信
プレスリリースを配信する方法は複数ありますが(配信サービス、直接送付、記者クラブなど)、やみくもに大量のメディアに一律に送付する**「数打てば当たる」的なアプローチは避けるべき**です。
- 非効率と悪印象:大量配信は効率が悪く、メディア側に**「自社のことを理解していない」というネガティブな印象**を与えるリスクがあります。
- 関係構築の阻害:配信サービスによる一斉配信は広範囲にアプローチできますが、個別のメディア担当者との深い関係構築には繋がりにくい側面があります。一斉配信のメールは「その他大勢」のプレスリリースの一つとして扱われ、読まれずに見過ごされる可能性があります。
- 戦略的な使い分け:特定の業界やジャンルに絞って深くアプローチしたい場合は、メディアリストを使った直接送付が推奨されます。重要な発表は配信サービスと主要メディアへの直接送付を併用し、軽微なニュースは配信サービスのみを利用するなど、発表内容や重要度に応じて複数の方法を組み合わせるのが理想的です。
6:関係構築の基本(信頼の積み上げ)
メディアリレーションズは、企業とメディアが長期的な信頼関係を築くことが基本です。広報担当者は、一方的に情報を送るのではなく、顔が見える双方向の関係を作っておくことが大切です。
- パーソナライズされたアプローチ:ターゲットメディアに合わせてカスタマイズした個別アプローチは、一斉配信のメールよりも開封されやすく、好意的に受け取られる可能性が高いです。記者が過去に書いた記事に言及したり、熱意を伝えたりすることで、長期的な信頼関係を築くことができます。
- 接点の構築:広報を始めたばかりで人脈がない場合は、積極的なメディアアプローチやイベント参加を通じて人脈を作ることをお勧めします。
- 継続的な情報提供:プレスリリースは「作って届けること」が重要であり、情報発信を継続的に行うことで自社が知られる機会を増やし、企業の成長を力強く後押しする貴重な資産となります。
- メディアの視点への配慮:新聞記者やメディア関係者は多忙なため、ただ資料を送りつけるだけでは情報に気付いてもらえません。プレスリリースを不在時に届けてしまった場合は、電話を入れたり、名刺を置いておいたりするなど、プラスアルファの行動でこちらの存在を意識してもらいましょう。
協力者としての姿勢:自治体職員と地元メディアのように、広報担当者とメディアは「地域を盛り上げる」「住民を幸せにする」という同志として、率直な意見交換をする機会を持つことで、互いの理解を深め合うことができます。

